第11章 恋の端っこを摘まみながら
※冒頭はヒロイン視点のお話です。
「蛍、もう朝ですよ?いい加減起きたらどうです?」
「んぅ…う…ねむい……って宗!?」
重い瞼を開けた途端、ドキッとした。
私の顔を覗き込んでいる宗次郎。
…もとい、私の想い人。
片恋だけど…
「起きて、蛍。」
「な、なんで部屋にいるの!?」
「だって蛍が起きてくれないんですもん。仕方がないから起こしに来たんです。」
こどものように口を尖らせる宗次郎。
可愛い。でも…
「ごめん、あと五分、いや三分…」
「今日は一日たくさんお仕事、でしょ?早くしないと僕も志々雄さんに怒られちゃいます。」
「だけど私、昨晩も遅くまで仕事だったんだよ?…ふあぁ…」
のんびりとあくびをし、再び夢の世界へ旅立とうとすると、
「こら!起きてください!」
「きゃっ!?わっ!ちょっと!」
「蛍が起きるまでここ、動きませんから♪」
宗次郎が馬乗りに…!
心臓は破裂寸前。
もう、こう言うしかない…
「ごめんなさい!今すぐ支度します…!」
「はい、よく言えましたね。」
にっこり、と笑顔が返ってきた。
…多分宗次郎は私の気持ちなんかに気付いてはいないんだろうな。ただの同僚、友達…
でもそれはとっくに自覚してるし覚悟もしてる。
だからこそ、冗談のつもりのこの行為は…宗次郎を好いている私にとっては嬉しくもあったけど、ずるいと思っちゃう…。
だけどいいの。
宗次郎といることが幸せなんだから、これ以上のものはいらないもん。
「蛍?」
「は、はい?」
思わず声が裏返ってしまう。え、なに?宗次郎、そんなに見られると恥ずかしいんですけど…
「…後ろの方の髪、すごいことになってます。」
「えっ?」
「手がかかるなぁ。はい、座って。」
宗次郎は座りながらぽんぽん、と床を叩く。
「ほら早く。直してあげますから。」
「は、はぁい…」
流されるように宗次郎の前に座ると、優しく頭に触れる手。
…あれ、これ、どういう感じ?宗次郎の方がこういうこてしてるって。な、何してるんだろう…。
それに、近いし…!
ようやく緊張し出すもお構いなしに宗次郎の指先は髪に触れていく。