第2章 #2
1週間ほど経った今日。財前とは口も聞かない所か目も合わない。
何故彼を目で追ってしまうのか。
体を重ね欲の味を知ってしまったから?
そんなことを考えてはため息をつく日々だった。
ー遊びだったんだ
彼の本気という言葉に期待したのに。だが少しでも可能性があるならこのまま終わりたくもなかった。
部活後に男子テニス部の部室へ足を運ぶ。
「…?」
ドアを開けると、他の部員は既に帰ったのか怪訝そうにこちらを見る彼の姿だけあった。
「なんや名前先輩…どうしたん」
片手にある携帯へ視線を落とし素っ気ない態度に涙腺が熱くなるのをぐっと堪える。
『…財前くんの本気ってなに』
「は?」
震える声でスカートのプリーツを掴み俯く彼女に財前の顔は見えないが、恐らく更に訝しげな表情になっているだろうことは容易にわかった。
『遊びだったのは財前くんの方だよ…!』
はぁ、とため息と共に彼が横切った。
呆れられた。
「…何を好き勝手言うてくれるんすか」
恋を諦めようとした矢先、ドアから出て行ったと思った彼はそうでなく、部室の鍵を閉めたのだった。
「俺が本気でもない女に手を出す男に見えるんか…!」
振り向きこちらを睨んでいる財前に、不思議と怯まない。
「先輩こそどうなん?好きでもない男に抱かれるんは俺で何人目?」
『そんなワケ…っ』
「今日はそろそろ抱かれに来てるんやろ?」
喉まででかかった"そんなこと"
「ならお望み通りに抱いたるわ」
逃げられないよう両壁に手を付き挟まれた名前。逃げ出す所かこれからの行為を心待ちにすらしている。
『…私も好きだもん…』
「は…?」
『好きだから欲情されて嬉しかったの…』
項垂れる姿しか見えないが顔は赤面してるのだろう。
「違うで」
諭すように、優しい声で財前は言う。
「セックスのドキドキと勘違いしてるんやろ…ほんまに俺が悪いです…」
彼の表情は穏やかだった。
何故。お互いに想いあっているはずなのにどこが寂しげな顔をされてしまうのだろうか。
『ちがう…財前くん以外とこんなことしたいって思わない!』
胸倉を掴むとまでは言わないが、制服を握り詰め寄る彼女に財前は返す言葉がない。