第16章 重なる想い
「…俺には、かつてひとりの友がいた。生真面目で、頑固で、優しすぎるほどに優しい男でな。
その男は戦で仲間を失い、今はもう復讐に身を焦がす鬼となった
そんな優しい男までをも信長は…地獄に落し鬼へ変えてしまった。」
怒りに歪めていた表情は、いつしか悲しみの顔へと変わっていて…
…こんなに仲間を大切の思うこの人にとって、それがどれだけ辛く悲しいことだったんだろう
信玄様は残された家臣や友達のために、たった一人ですべてを背負って戦おうとしてるんだ…
今にも泣き出しそうな私に、信玄様の手が優しく髪に触れた
「また君を泣かせてしまいそうだな…」
見上げた信玄様は、困ったような悲しそうにも見える笑顔で…
その笑顔に余計に胸が締め付けられた
泣きそうなのは、貴方でしょう……