第14章 悲しき鬼女、レッドアイ族の悲劇
カラ松は叫ぶように声を上げる。
「なぜ泣くんだ?理由を聞かせてくれないか?」
「私の姿を見れば、あなたは石になってしまいます」
消え入りそうな声で、女が答える。
「それなら大丈夫だ。俺はお前の姿を、輪郭でしか見ることが出来ない」
すると女はおずおずと出てきた。下半身は蛇、上半身は人間のようだが髪は全てコブラという出で立ち。自分の目の前に現れたその女に、カラ松が問う。
「お前は何者だ?」
「メデューサ……。本当の名前は、○○」
「メデューサ…。聞いたことがあるぞ。その姿の恐ろしさに、見た者は石になるというが。何がどう恐ろしいのか、分からんな」
すると○○は涙を流した。その涙は宝石となり、地に落ちる。
「お前の涙だったのか。何を泣いているんだ?」
「私の姿を見て石にならない種族がいたなんて…!」
「お前が悲しんでいる訳を、聞かせてくれないか?」
「私は以前は、女神でした。メデューサという名前も、女王という意味があります。その頃の私は愚かでした。私は小さい頃から髪の美しさを誉められていて、大人になってアテナ神の神殿で、こともあろうか私の髪はアテナ神の髪より美しいと豪語してしまい、アテナ神の怒りに触れ、この姿にされてしまったんです」
「たったそれだけでか?!神ってのは随分器が小さいんだな」
「自分の姿を見て、愕然としました。こんな恐ろしい姿では他種族の前に出ることもできない…。事実、私の姿を見た動物系モンスターが石になっています」
言われて辺りを見れば、確かに動物系モンスターや他種族の者の石像がある。どれも恐怖におののいた顔をしていた。
「お前が悲しむ訳はわかった。だがな、お前は自分だけが悲しい思いをしていると思っていないか?俺も以前仲間に言われたが、悲しい思いをしているのは、お前だけじゃない」
○○はカラ松を真っ直ぐ見た。カラ松も閉じた目で○○を見つめる。
「俺たちレッドアイ族はその昔、こんな風に目を閉じてはいなかったそうだ。だがいつからか目から熱線を放つようになり、目を閉じていても物の輪郭が見えるほどの力を持つようになった。だがそのせいで他種族の者に化け物と呼ばれ、迫害されるようになったんだ。俺と妹に両親がいないのも、他種族のレッドアイ族狩りにあったせいだ」
足元の宝石を手にした。