第13章 泣き声の正体
「クソ松!くだらねぇこと、言ってんじゃねぇ!」
「本当なんだ!悲しそうに泣いているんだ!止めてやらなきゃ!」
一松は耳をすませてみた。だが聞こえるのは、風が木々を揺らし、葉を擦らせる音だけだった。
「聞こえねぇよ、バカ!」
「まあまあ。その泣き声の正体が分かれば、気がすむんでしょ?風の音だろうとなんだろうと本人の気がすむまで、やらせてやんなよ」
「ちっ。どうせ何もないだろうよ」
「すまない、おそ松。みんな」
「でもその前に、宿をとりたいな」
「はいはいはーい!さんせーい!」
歩きながら街を探すおそ松たち。しばらく行くが、カラ松が言う泣き声は聞こえてこない。
「やはりあれは、俺の思い過ごしだったんだろうか…?」
「それ以外に、ねぇよ!!このクソボケ松!」
それからしばらくして、大きな街が見えた。
「街だー!!」
「どうか、誰かが住んでますように!!」
祈るような気持ちで街に行くと、そこはとてもにぎやかな街だった。みんなとてもにこやかだ。
「こんにちは!さあさあ、どうぞ私の宿へ!お疲れでしょう?」
「いやいや、私の宿は全室お風呂付き!朝食もついてますよ!」
「私のところなんて、お風呂から満天の星空が見えますよ!」
街に着くや否や、いたるところの宿屋の店主が出てきて、おそ松たちをなんとか自分の宿に泊まらせようと必死になっている。
「えと、おいくらほど…?5人なんだけど」
それぞれの店主が示した金額はどれも高額で、とても払える値段ではなかった。
「なんだ、金持ちじゃないのか」
さっきまで躍起になっていた店主たちは、おそ松の所持金がそんなにないと分かると、手のひらを返したように去っていった。
「ですよねー」
「あーあ。また野宿か」
「都会は怖いなぁ」
「往生しまんなぁ」
「あ、あの」
一人の老人が声をかけてきた。
「もしよろしければ、うちの宿へどうぞ」
「えっ?!おじいさんも宿屋?」
「はい。ただ先程の宿屋より、かなり質が落ちますが」
「俺たち、これだけしかお金ないけど」
手のひらに乗せたお金を見せる。それはチョロ松が城を出る時、王が持たせたお金の残りだった。
「ああ、これで十分ですよ。どうぞ」
「助かったー!」
ついて行くと、老人が言うほど質の悪い宿ではなさそうだし、ベッドもふかふかで気持ちいい。