第12章 おそ松の修行
ゴブリンの街を去ってから数日後、おそ松はチョロ松と一松に、剣術を教わっていた。
「ちょ、本気じゃん!」
「本気でやらないで、どうするの?!手加減してたら、修行にならないでしょ!」
「だからってさ!せめてもう少し基礎が出来てから、とか!」
「じゃあ腹筋100回」
「ひゃ…!50にまけて!」
「まかるか、ボケ!!」
「わーん!十四松ぅ、チョロ松と一松がいじめるよぉ!」
「え?いじめてないよ?普通だよ」
おそ松は十四松がゼムアに弓矢を教わっていたのを思い出した。
「カラ松ぅ、あの3人がいじめるよぉ!」
「ふっ。いい加減覚悟するんだな、おそ松。己の命を、仲間の命を守るためだ。アンダスタン?」
「ほら、続けるよ!」
「お前ら、覚えてろよ?!絶対強くなって、見返してやるからな!死ね、死ね!!」
「はい、いち、に、いち、に!」
「早いって!もっとゆっくり!」
「母親のためなんだろ?」
カラ松の言葉におそ松の動きが止まった。
「………母さん…!こうしてる間にも母さんは……!」
それから弱音を吐かなくなったおそ松は、日に日に上達していった。最初は剣を振るうだけで精一杯だったのが、自分の思うように振り回せるまでになった。
「よくこの短期間で、ここまで上達したな」
「正直、途中で諦めると思ってた」
「おそ松兄さん、すっごいね!」
「へへーん。俺だって本気を出せば、こんなもんなんだよ!」
「だが、安心するのはまだ早いぜ?」
「そう。実戦で使えなきゃ、意味がない」
「先ずは僕が相手だ!」
チョロ松が剣を構えた。おそ松もそれに応える。
「手加減はしないよ」
「望むところだ!」
二人の剣がぶつかり合う。
「だりゃぁあああ!!」
「うぉおおおお!!」
だが、やはり経験の差だろう。おそ松がしりもちをついた。
「タンマ!」
「何甘いこと言ってるの?!相手が敵なら今ここで、おそ松は死んでるよ?!」
「わ、分かってるって!けど俺、始めてからまだそんな経ってないじゃん!休憩させて!」
チョロ松はやれやれとため息をついて剣を下ろした。
「まあ確かに、いざって時にスタミナ切れじゃ、本末転倒だしね」
その時カラ松が何かに気づいたように、顔を上げた。
「どうした、クソ松?」
「誰か、泣いてないか?」
「何も聞こえないけど?」