第11章 ゼムアの願い
「げひひひ!そんなものが、この俺様に通用するかな?!」
「「やってみなけりゃ、わからない!!」」
放たれた矢は、以前の弓よりも速く飛び、頭脳食いの目に命中した。
「ぎぃぁああ!!この俺が…!この俺が、こんな低俗どもにぃいい!!」
「今なら目を開いても、大丈夫だろう」
カラ松の言葉に全員、目を開く。言葉の通り頭脳食いは、射抜かれた片目を押さえてのたうちまわっていた。
「今度こそ、とどめを刺すよ!」
「分かった!」
再び勇者の弓に矢をつがえる。チョロ松が手を添えると、矢は頭脳食いの眉間めがけて放たれた。脳を射抜かれ、声も出さずに倒れる頭脳食い。
「十四松、俺が焼き尽くしてもいいか?ゴブリンたちの仇を取らせて欲しいんだ」
「カラ松兄さん…。分かった」
「すまない」
カラ松はおそ松やゼムアが視界に入らないように、頭脳食いの側に移動した。
「哀れなゴブリンたちの仇だ、ゲス野郎!!」
目を開くと、頭脳食いは跡形もなく消えた。
「師匠!」
「兄上!」
ゼムアの側に行くチョロ松と十四松。ゼムアは未だ虚ろな目をしていた。
「兄上!僕です、チョロ松です!」
「師匠!十四松です!」
二人の声が、想いが届いたのか、ゼムアがピクリと動いた。
「チョロ、松……?じゅ……しま……?」
「はい!チョロ松です、兄上!おそ松たちと共に、ここまで来ました!」
「師匠!僕、森エルフの勇者の弓を、引けるようになったんだよ!」
「お………おお……。チョ………ま……。じゅ、し……、おれ……こえt……」
カラ松は廊下に向かって早足で歩き始めた。
「俺……、見ていられないぜ!廊下で待ってる…!」
その顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「俺も、部屋を出とくわ」
一松も廊下に出た。
「もしかしてあの階段の幻術は、兄上が?」
「そ…だ。ちかづか、な…よ、に……」
「頭脳食いにやられるから、近づかないようにしたんだね?!」
「そういえば兄上だけが、術者が死ぬまで解けない魔法を使えるんだった!じゃああの幻術も、そうなんだね?」
十四松とチョロ松の言葉に、頷くゼムア。その頷きすらも、するのが辛そうだ。
「兄上、城に帰りましょう!おそ松には悪いけど、僕はここで旅から抜けさせてもらうから」
しかしゼムアは、首を横に振った。
「……そ、は…、むぃ……だ」