第5章 心優しき残虐なる者
「さあ、召し上がれ」
「いっただっきまーす!!」
早速料理にかぶりつくおそ松たち。
「んまぁああ!!」
「くぅっ!最近、アニマル系モンスターの丸焼きしか食ってなかったからなぁ。五臓六腑に染み渡るぜ!!」
「俺も食っていいの?」
「かまわないとも。闇エルフが森エルフに加担するなど、よほどの覚悟がなければできんことだ」
「は?森エルフに加担するなんて、言ってないんだけど?俺はこのロック鳥とレプリコーンに加担するだけだし」
「それでも、私の息子と共に旅をすることに変わりはない」
「…勝手に言ってれば?」
一松は少しはにかんだ顔で、料理を口にした。
しばらくして食事が終わるとおそ松は、森エルフ王に告げる。
「悪いんだけどさ、一泊させてくんねぇかな。1日も早く行かなきゃってのは分かるけど、俺が体壊したら、元も子もないしさ」
「確かに!」
「一理あるね」
「どうぞ、お泊まりください」
「やりぃ!!野宿ばっかで、体痛くてさ。助かったよー」
その晩おそ松は、寝心地のよさそうなベッドでぐっすり…とはいかなかった。母親のことが気になって、寝付けない。
「……母さん…。待っててくれな?俺、絶対ストーグロックにたどり着くから…!」
そして寝付けない男が、もう一人。
「……くっ!!はぁ、はぁ…。頑張ってこの弓を、普通に引けるようにならなきゃ!!僕は、森エルフの勇者なんだから…!」
翌朝。それでも少しは眠れたのか、おそ松も十四松も、スッキリした顔になっていた。
「世話になっちゃったね」
「いえいえ。帰りもぜひ、お立ち寄り下さい」
「りょーかーい」
「父上、行ってきます!」
「しっかりお役に立つんだぞ」
「はい!!」
手を振りながら小さくなる姿を見送りながら、王は呟いた。
「古の言い伝えが、まさか我が子も入っていたとはな」
「森を統べる王、ですか」
「うむ」
「きっと王子も、ゴールドドラゴンに会って、この世界を平和にしてくださいましょう」
一気ににぎやかになったおそ松一行。十四松に出会うまでは一人だったが、今はこんなに仲間がいる。おそ松はそれが嬉しかった。
時折後ろを振り返っては、鼻の下を指で擦っている。
「にひひー」
「何?気持ち悪いんだけど」
「んや。何か、うれしくってさ」
「うんうん、分かる!」