第4章 森を統べる王
猛スピードで走る十四松に、必死にしがみつくおそ松。
「あっ!」
声を上げた十四松が、足を止めた。
「おそ松兄さん、あれを見て」
言われた方向を見るが、何もない。ただ森が広がるだけだ。
「何もないけど?」
「ううん、よーく見て。あそこ、お城がある」
「城?」
目をこらすも、やはり何もない。
「は?どこよ?」
「一旦下ろすね?」
十四松の背中から降りたおそ松は、十四松が指差す方を見た。
「んー?わかんねぇ」
「確かに、かなり巧妙に隠してあるからね」
十四松がもう一度おそ松を背負おうとした時、一匹の角猫が走ってきた。
「あは!ご飯だ!」
十四松が矢を違う方向に放つと角猫はジャンプして、自ら矢に当たりにいったような形になった。
「角猫は飛び上がる習性があるから、あの位置がちょうどいいんだ」
「へぇー。大したもんだねぇ」
そこへ馬に乗ったエルフ族の男がやって来た。そして射抜かれて倒れている角猫を見るや、舌打ちした。
「何で僕の獲物を、勝手に仕留めちゃうかな?!」
「知るわけねぇじゃん。角猫が走って来たから、仕留めただけだろ?」
つっかかるおそ松とは対照的に、謝る十四松。
「ごめんね?君の獲物だなんて、知らなかったんだよ」
「……ここは元から、僕たち森エルフの領地なんだ。ここのアニマル系モンスターには、手を出さないでほしいな。しかも僕は、森エルフ王子だしね」
「うわー。自意識、高いねー。ライジングしてるねー」
「何だよ、ライジングって!とにかく、早々に出ていってくれる?!」
「何処から?」
「ここから」
「どうやって?」
「っ!」
「て言うかさぁ。森エルフの領地って、どこにも書いてなかったよ?初めて森に入った俺なんか、特に分かんないよねぇ?」
「~~~~~!!うるさい、うるさい!とにかく、帰れ!」
「帰れったって、帰れねぇよ!」
背を向けて走り去る森エルフ王子。
「あんの野郎!ただじゃおかねぇぞ!この俺を、なぁめんなよぉ?!」
「お怒りだね!」
「あたぼうよ!!」
十四松が示す方向に走るおそ松。やがてそれは、姿を現した。
「お?おぉおおおおおお?!すげぇ!」
森の木々に隠れるように、うまくカモフラージュした城が、そこにはあった。
「あっ!!」
ちょうど城に入ろうとする、あの男を見つけた。