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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第7章 夏の風 ―ユキside―



風が心地良い。
ふわりと通り過ぎる度に揺れる、舞の髪。
甘い香りに癒やされ、左肩に伝わるじんわり温かな熱には安心感すら覚える。

練習の疲れなのか、満腹だからなのか。
柔らかな風を感じていると俺にまで睡魔が訪れ、勝手に体が傾いて舞に寄り添う体勢になってしまう。
微かな意識で何度か上半身を立て直そうと試みるが、微睡みの中では無駄な努力だったようで…。

いつの間にか、眠りに落ちていた。





―――……


ふと、頭に何かが触れていることに気づく。
顔を上げたところには俺を見下ろす舞。
目が合うなりそっと手を浮かせる様子に、今髪を撫でていたのは舞の掌だということを理解した。

「起きた?」

「…おはよ」

「練習始まるまであと30分くらい。もう少し眠れるよ」

「そう…。つーかこの格好…」

俺の頭は、舞の肩ではなく弾力のある何かの上。

「少し動こうとしたらね、ユキくん倒れてきて…」

先に目覚めた舞は、俺のためにカゴの中のタオルケットを取ろうと腰を上げたらしい。
その拍子に支えのなくなった俺の体はそのまま舞の方へと倒れ、こんな―――膝枕をされている状態になってしまったというわけだ。


「起こせばよかったのに」

「午後に備えて休んで欲しかったし」

「重くね?」

「大丈夫」

「このままでもいい?」

「うん」

言葉少ないやり取り。
吹き抜ける風と同じ、優しく包み込む舞の笑顔。
愛しさが募り、自分の左手を宙に浮かせ催促する。

「手」

「うん」

指を絡め合って重ねた、二つの手。
束の間の休息は、とても安らげる贅沢な時間だ。


考えてみれば、付き合い始めてからまともなデートをしていない。
毎日練習練習で遊びにも行けないし、舞と会う場所と言えばグラウンドか近所の公園。
でなければ、駅前のどこかの店で飯を食うくらいのもの。
マメに会えるのは嬉しいし俺は励みになっているが、舞には退屈させているのではないかという不安が拭えない。


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