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淡雪ふわり【風強・ユキ】

第9章 夏の星座 ―ユキside―



「心と心がガッツリ繋がってれば、大丈夫」

「うん」

温もりを求めるみたいに抱き着いてくる舞の体を、優しく抱き返す。


「好きだよ、舞」


「私も。好き…」


想いを込めて、甘いキスを。
何度も、何度も。


「桃の味がするね」

「少女漫画か」

「あ、少女漫画バカにした!」

「してねーよ。でも漫画のことで王子と仲良さげなのは実はムカつく。俺にも例の雪人先輩読ませろ」

「ふふっ、王子くんに借りたら?貸してくれれば、だけど」

声色が明るくなった舞にホッとしたところで、買ってきたスイーツに手を伸ばした。
フルーツが数種類乗っかった、プリンアラモード。
スプーンで掬いながら、東京に戻ってからのデートのプランを練る。

「どっか行きたいとこ、ある?」

「美味しいごはん食べたいな」

「そりゃもちろん。ご馳走しますよ」

「あと、デザートも」

「食いもんばっかかよ。プレゼントも、欲しいもの考えといて」


大切な人の誕生日というのは不思議なもので、祝う方も気分が高揚する。
今日のお祝いはコンビニスイーツと缶酎ハイ。
豪華な料理でもシャンパンでもない。
特別なのは舞の生まれた日を二人きりで過ごせるこの時間。
そして、無数の煌めきを天に散りばめたこの夜空だ。


「私、22歳の誕生日、絶対に忘れない」


満足なお祝いもしてやれなくて最初は少し悔やんだけれど。
今夜のこの情景が、何年先までも舞の胸に残っていてくれたらと願う。


「素敵な誕生日をありがとう。ユキくん」


肩に寄り添ってくる舞。
こんなに真っ直ぐな言葉、俺だったら照れくさくてきっと言えやしない。

愛おしいよ。
心から。

この先もずっと守りたい、そばに居てほしい、ただ一人の存在。
俺の大切な舞を、片腕で抱き寄せる。




君が生まれてきてくれたこの日に、感謝を。
誕生日おめでとう。舞。




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