第10章 Blue Sky
退屈極まりないと思われた沙羅の入院生活は、思いのほか慌ただしく過ぎていった。というのは、噂を聞いた隊士たちがこぞって見舞いに押しかけてきたためである。
彼らはそれぞれ「生きててよかった」と縁起でもなく泣き崩れたり、「もう二度と無茶はしないでください!」と頭に角を生やしたりしていたが、中でも人一倍小言が激しかったのがルキア。「どれだけ心配したかわかってるのか!」だの「具合が悪かったのなら早く言え!」だの、それはもうこてんぱんに説教を喰らった。
だが沙羅が親に叱られた子供のように頭(こうべ)を垂れて「ごめんなさい」と告げれば、口ではまだぶつぶつと言いながらもその表情は穏やかに和らいだ。
そんなお見舞いラッシュもようやく収まり、静けさを取り戻した病室に沙羅が息をついた入院五日目の午後。
「やっほ~。あら、あんまやつれてないわね。つまんないの」
冗談とも本気とも取れないような口調で顔を覗かせたのは、ニカッと笑みを浮かべた親友だった。
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