第6章 Mission
「あっいたいた! どこ行ってたのよー! 今日はあんたの昇格祝いするって言ったじゃない」
現世から戻ってきた沙羅を出迎えたのは乱菊の甲高い声だった。
「ごめんごめん。午後は休暇をもらったからちょっと現世まで息抜きに行ってたんだ」
顔の前で手を合わせる沙羅に、乱菊はキラリと目を光らせる。
「な~に? ちょっと前までは現世に行くの面倒くさがってたくせして。なにかいいことでもあったんでしょ? なに? なんなの!?」
「別になにも――」
「嘘よ、ぜぇーったい嘘! ねえどうしたの? さては向こうでイケメンでもゲットしたわけ? 教えなさいよねえ~!」
「やっ、乱菊やめ――きゃははは! ちょっ、くすぐるのはナシ! ねえ、あはははっ! ちょっと!」
執拗に問いただしてくる乱菊から沙羅は笑い泣きしつつも辛うじて逃れる。
「もー! やめてってば!」
「ちっ……しぶといわね。いいわよ、なにがあったのかまでは聞かない。でも――悪いことじゃないのは確かなんでしょ?」
気遣いの入り混じった瞳を向けてくる親友に、沙羅はふわりと笑って頷いた。途端。
「……やっぱりなにかあったんじゃない……」
「ひゃあっ! 卑怯者ー!」
指をコチョコチョと動かして迫ってくる乱菊に沙羅は悲鳴をあげて逃げだす。
「……まあいいわ。吐かせるチャンスなんていくらでもあるしね。今夜は記憶飛ぶほど飲ませるから覚悟しなさいよね~」
そう言って黒い笑みを浮かべる乱菊に、沙羅は冷や汗を垂らしてあとずさった。
「私……ちょっとお腹が痛いかも……」
「副隊長が腹痛くらいでグダグダ言ってんじゃないわよ。さ、行くわよー!」
「いーやぁーーー!!」
有無を言わせぬ気迫の乱菊になすすべなく連行されていくのであった。