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Dear…【BLEACH】

第12章 Remember


 空座町の西方、夕焼けに染まる森を背景に、そこだけがまるで切り取られたかのように白く浮かび上がっていた。
 これまでに幾度となく目にした純白の衣。

「ウル――……!」

 少し距離を残して着地し、その後ろ姿に向かって声をあげたところで沙羅は硬直した。

「……あァ?」

 振り返りざまに風に揺れたその髪は、黒ではなく、空の色。
 そして完全に自分の姿を捉えて細められた瞳も、翡翠ではなく、髪と同じ色。

「てめえ……死神か」

 鋭い眼光を光らせたその男に沙羅の脳内で一斉に警鐘が鳴り響いた。それは闘いの中に身を置く者のいわば本能的な警告。
 険しい面持ちで後ずさった沙羅に、男はニヤリと口元を歪めた。

「……はっ。懲りねえやつらだな、死神ってのも。またこの前の連中みたいに殺されたいのかよ?」

 男が発した言葉に沙羅の動きがとまる。

「……この前?」

 甦る惨劇の場。駆けつけたときいまだあの場に色濃く残されていた禍々しい霊圧と、今目の前の男から感じる霊圧は異様なほどに酷似していた。

「お仲間は教えてくれなかったか? 自分たちを殺した相手がどんなやつだったか」

 一歩、また一歩と距離を詰めながら男は嘲笑を浮かべて沙羅を見つめる。

「もっとも、しゃべる口があったらの話だけどな」
「十刃……」
「ああ、わかってんじゃねえか」

 感心したように口角を吊りあげた男は、残り数mへと迫った沙羅に向けて掌をかざした。

「第6十刃(セスタ・エスパーダ)――グリムジョー・ジャガージャック。ここで俺に会ったのが運の尽きだったな。恨むなら相手の力量を測りもしねぇでのこのこ近づいてきたてめえの浅はかさを恨め」

 言い終わると同時に男の手の中に莫大な熱量が集っていく。
 そうして一点に凝縮された熱の塊は、ギュオッと音を立ててはじけると紅い光弾となって沙羅に降りそそいだ――


 ***

《Remember…甦る記憶》

 凶刃が迫る。
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