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【ハリポタ】静かなる鎮魂歌【リドル】

第3章 母親


 教室の中から、不機嫌そうなコルウスの声が聞こえてきた。アリスは悪戯がばれた子供の様に笑っていた。

「聞こえちゃった?でも本当でしょ。お兄様ってばいつも1人でるんですもの、妹としては心配だわ。私も――そう永くはなさそうだし……」
「――心配するなアリス。俺は1人でもやっていけるし、お前の病気もいつか必ず治してやる」

 少し気落ちしたアリスを慰める様に、コルウスは優しくささやいた。
 正直リドルは驚いた、この男もこんな風に優しく声をかける事があるなんて。それほど、この妹が大切なのだろう。
 しかしリドルには理解できなかった。高々血が繋がなっているというだけで、この非情な男がこんなに優しくなれるとは。

 アリスは教室に入ると、入り口に立ったままのリドルに向かって手招きをした。どうやら入って来いと言っているみたいだ。仕方なく、リドルは教室に入った。

「ねえ知ってる、リドル。お兄様って凄く魔法薬学が得意なのよ。毎日こうしてお母さまの病気を治す薬を作ってくれるの」
「アリス、余計な事は言わなくていい」
「あら、良いじゃない自慢したって。それに私、リドルとお兄様は仲良くなれると思うの」
「誰がこんな奴と」

 コルウスはリドルの顔も見ないで言った。リドルからすれば失礼極まりない発言だったが、この場はグッと堪えた。相手は主席で同じ寮の先輩だ、下手に言い返すと後で厄介な事になりかねない。
 アリスは取り付く島もない兄に対して、微笑みながらもため息を吐いた。コルウスはそんな事気にも留めず、出来上がった薬を小瓶に入れた。

「出来たぞアリス。これを持って母上に届けると良い」
「いつもありがとう、お兄様」

 そう言うと、アリスは金色の髪を揺らしながら教室を出て行った。その後姿を見ながら、リドルは本当に似ていない兄妹だと思った。
 片や暗い影を背負っている黒髪の美男子と、もう片や笑顔の似合う金髪の美少女。2人が並んでいても、誰も兄妹だとは思うまい。
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