第21章 「寒さなど吹き飛ばして」/明智光秀
「さて今日一日頑張ったお前に奉仕してやろう。
何がお望みだ?」
「え……え?」
光秀さんが告げた言葉は、
きっとまた意地悪をするためのものなのかと思い、
光秀さんの顔を見つめるけれど、
そこには他意などなく、
ただ優しげに私を見つめる光秀さんの姿しかなかった。
「じゃあ……ぎゅっとしてほしいです」
「こうか?」
「はい」
私の腰に光秀さんの両腕が回されて、
優しく抱き締められる。
自然と光秀さんの胸元辺りに私の顔が近寄り、
光秀さんの香りが鼻をくすぐる。
私も光秀さんの腰辺りに両腕を回して、
私よりも体温の低いその身体を温めるように抱きしめ返すと、
光秀さんが私の頭に顔を埋めた。
「?」
「温かいな、お前は」
私の意図が伝わったのか、
頭上から光秀さんがくすりと笑う気配がした。
お互いの体温で冷えた身体を温める。
───寒さなど吹き飛ばしてしまえと。
【the end】