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イケメン戦国 《短編集》

第14章 「全ての光」/上杉謙信


怒号や悲鳴が叫び、
この広い空へと響く中。
意識も朦朧とした謙信が思うことは、
先に進んでしまった舞に逢えるという喜び。

もちろん、
舞が生きていた頃も死ぬことに恐怖など感じなかった。
ただ、不安はあった。
もしここで俺が死ねば、
誰があいつを守るのか?と。
そんなものは決まっている、
この俺自身でなくばならないのだと。
そうして幾度も立ち上がってきた。
必ず帰ろうと生きる渇望を覚えた。


元々女という生き物はこの乱世では弱いものだ
だからこそ俺は舞のこともそう思っていた。
でも舞と話してみて触れてみて思い知った。
確かに抗う術はなくても、
その心の強さはあまりにも輝かしく、
そして何よりも強かった。

あんな女は見たことがなかった。
だからこそ無性に惹かれた。
触れてみたくなった。
もっと傍にいたくなった。

そうしていつの日か己だけのものになった時。
あの時の高揚感は今でも忘れがたい。

あぁでもお前は先に俺を置いていってしまった。
「どうか生きて」と、
あまりにも残酷な願いを俺に託し残していって。

俺はあの時ほどの絶望を味わったことはない。
世界が暗くなってしまったあの時ほど。
もう何も見えなくなった。
温かなものに埋まっていた筈の心は、
ぽっかりと穴が空いて冷え始めた。

何もしたくなくなった。
生きる意味も失った。
だけど最愛の女から託された最後の願いが、
いつまでも胸の内に疼いて。

あぁほらもう良いだろう?
戦場で死ねるなど武士としては誇らしい事なのだ。
お前には分からないのかもしれないが

──どうかお前の望みを叶えられなかった事を許してくれ。
もうお前のいない世界で生きるのは辛いんだ。


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