第23章 バレンタインデー

忙しくて寂しい日々を過ごしながら、なんとか鬼退治任務も終わり、明後日がバレンタインデーだ、と思っていたらなんと買い忘れていた物があったことに気付いた。

クッキーを皆に配るために詰める袋だ…
一つ一つ可愛くラッピングして渡す予定なのに。大倶利伽羅さんのガトーショコラを入れる箱もないではないか。

これは困った。執務が終わってから夕餉前に万屋に行くしかない。今週の近侍の兼さんに頼むしか…


「兼さん…お願いがあるんだけど」

「ん？なんだあ？」

「万屋に行きたいんだけど、一緒に来てくれる？」

「言っておくが、主といえど金は貸さねえからな」

「そんなんじゃないってば」


私用だから忙しかったら断っていい…と言うと、兼さんは「いいってことよ、それより万屋なんか行ったらオレのファンが増えちまうかなー？」と笑っている。

本丸の門をくぐり、万屋の方に続く道を歩いた。
万屋がある繁華街に近付くにつれて、段々と賑やかになっていく。


「今日はいつもより人が多いんだな、あんた鈍臭いんだからはぐれないようにしろよ」

「はあい…でも本当多いね、バレンタインが近いからかなぁ…」

「そうかもしんねぇなあー」


万屋に着き、人混みをかき分けてやっとラッピングコーナーに辿り着いた。どれにしようか迷っていると、可愛い袋を見つけた。