第1章 ◆ありったけの愛を、君に。 碓氷真澄
私は、もう好きな人なんて作らない。
もうあんな馬鹿みたいな思いをするのはごめんだと。
そう、思ってるんだ。
「監督、今日も可愛い…」
「相変わらず真澄は監督の事好きだな」
「当たり前。愛してるし」
「…もー、いいから早く学校行きなさい!」
なのに、真澄くんは初めて会ったその時から、ずっと私を好きだと言ってくる。
愛してると伝えてくる。
その瞳はとても真っ直ぐで。
思わず、信じたくなってしまう。その好意を。気持ちを。
けれども、信じそうになる度に、あの時のことを思い出してしまって。
「そんなツれないところも可愛い」
「はいはい、いってらっしゃい」
「…行ってくる」
中々行こうとしない彼の背中を無理やり押して、ドアを閉めれば、寮の中は静寂な空間になる。
今日は皆仕事やら学校やら何やらで、出払ってしまっている。
私は特に出掛けるような予定も無いから、今日は次の秋組公演について、計画を立てるつもりだ。
細かくきっちり詰めていかないと、左京さんが怖いから…
「さて、やるか!」