第5章 Connaissance de la viande.
「ついに来たかぁ…」
翌日の早朝、一冊の冊子を前に、極星寮全員が集まっていた。
「あぁ、極星寮宛てに届いてた」
青褪める1年生たちを他所に、不思議そうな顔をして首を傾げる創真。
「何だコレ?宿泊研修…?」
「小学校や中学でもあったっしょ?何泊かする林間学校的なヤツ」
「へー!この学校、そういう行事もちゃんとあるのなー」
で、と創真は先程からぶるぶると隣で震えている恵を指差した。
「何で田所は震えてんの?」
「幸平…、この合宿はね、高等部に入った生徒に訪れる最初の地獄そのものなのよ…!
一年の全生徒が山奥の合宿所で毎日過酷な料理の試練を課され
合格点に届かなければ即退学を言い渡される!
"友情とふれあいの宿泊研修"なんて謳ってるけどその実態は、
"無情の篩い落し宿泊研修"なのよ!!」
慧も少し不安げに続ける。
「これが遠月の競争教育だ…。
学園総帥が言うところの"玉"の選抜が本格的に始まろうとしている…!」
「一色先輩も去年行ったんすよね?この合宿…」
「ああもちろん。僕の代でも連日何十人もの生徒が強制送還&退学させられていたよ。
…まったく、手厳しいことだ」
琥珀はなんだか複雑な気分になってしまう。
「…何年か前の合宿じゃ、生徒数が半分以下まで減ったらしいな」
それを聞いた恵は、ふらりと倒れ込んでしまった。
「みんな…今までありがとう…」
「恵ぃーーー!!!」
なんて茶番を繰り出している二人を放って、創真と琥珀は意気揚々としおりを眺めていた。
「ふむふむ…、トランプや将棋は持っていける…。携帯ゲーム機はダメ…と。
風呂の時間短すぎじゃねーか?」
『それは私も思ったんだけど、スケジュール的にこれが限界なんだって』
「何だそりゃスケジュール詰め込みすぎだろ!」
二人でケラケラと笑っていると、横から悠姫のツッコミが入る。
「ヘイヘイ二人とも…!何呑気に旅支度気分始めてんのよっ!
恵が末期の言葉を残してるのに!!」
キョトンとした様子の創真はしおりを見ながら返した。
「いやだって…、半分も生き残るんだろ?そんなかに全員入ればいいだけじゃん」
「僕も確信しているよ。極星寮の全員が、笑顔でここに帰ってくることを。
お留守番は僕とふみ緒さんに任せて、皆しっかり頑張っておいで!」
