第4章 Beau printemps.
「あんたが…十傑、だと…?」
創真は喉を鳴らし、静かに呟いた。
「さぁ、お次は創真くんの料理を食べてみたいな。
君は一体、どんな品を作ってくれるんだろう。
見せてもらうよ、君が皿の上に語る、物語を」
創真は武者震いの様に身体を震わせ、口角を上げる。
「お待ちを!」
と、創真は慧の皿を見つめた。
「ひょっとして先輩の実家は、割烹料理のお店か何か?」
「何故、そう思うんだい?」
「鰆の山椒焼きは和食では定番メニューだし、
こんな仕事、そこいらの店じゃできないですしね」
ふふ、と慧は不敵に笑う。
「鰆…。よし、幸平裏メニューその20が使える!」
「ゆきひら?」
「うちの実家の定食屋っすよ!
俺も食材は鰆でいきます。
幸平の人気メニューを先輩と
同じく春をテーマにお届けしますよ!」
と厨房にこもる創真。
『一色先輩…』
「ん?どうしたんだい琥珀ちゃん」
『まさか一色先輩から料理勝負挑むなんて思ってなかったですよ』
と琥珀は面白そうに笑う。
「琥珀ちゃんも何か1品作ってみたらどうかな?」
『私ですか?でも鰆は余ってないと思いますよ』
「鰆じゃなくてもいいよ。
久しぶりに、琥珀ちゃんの料理を食べたいなぁってね」
えぇ?と笑う琥珀。
『牽制のつもりですか?創真には一度、皿を食べさせてますよ』
そうなのかい?と驚いたように言う慧。
「あたしも食べたーい!」
と急に大音量で聞こえてきた声に、
琥珀は思わず飛び上がった。
『びっ………くりしたぁ!!』
心臓を押さえて目を見開く琥珀。
「おや、起きたんだね」
悠姫と涼子、峻が目を覚ましていた。
「私も久しぶりに食べたいわ」
と涼子が笑う。
『えぇ〜、そんな凝ったものは作れないよ〜?』
といいながらよいしょと立ち上がる。
『じゃあとりあえず食材を持ってくるよ』
と琥珀は部屋に戻っていった。