第3章 Vierge Marie.
夜も更けて、みんなが寝静まった為部屋の電気を消した。
「嗚呼、今夜は本当に楽しい夜だね。
改めて歓迎するよ、創真くん」
「いや…、こちらこそっすわ」
「もう料理が尽きたね、鰆の切り身があるんだ。
僕が何か、作ろう」
と慧はまた尻を振りながら厨房へ去っていった。
「その格好で調理するんすね…」
と苦笑いしている創真と共に、琥珀も苦笑する。
暫くした後、
「さあ出来たよ、召し上がれ。
鰆の山椒焼きピューレ添えだ」
と持ってきた皿を地面に置く。
「っへへ、いただきまーす!」
鰆を口に放り込んだ創真は、言葉を詰まらせる。
美味すぎる…!
山椒のピリッとした爽やかさと、独特の香り。
鰆のほくほくとした身と甘味をしっかりと引き立てている。
更にこの春キャベツのピューレ。
爽やかでとろっとした甘味があり、
春の鰆にピシャリと合っている。
春の食材を活かしきった料理…。
こんな繊細な皿を、あんな短時間でまとめ上げたってのか!?
他の寮生とはレベルが段違いだ…。
いくら2年生っていったって、
それだけでここまでの品が出せるってのか!?
「ところで」
と慧が珍しく低い声を出した。
「創真くんさぁ、始業式で
なかなか面白い事を言ったそうじゃないか」
その迫力に、創真は思わず喉を鳴らした。
「遠月の頂点を目指すってことは、
君が思ってる程甘くないかもしれないよ。
改めて、自己紹介をさせて貰おう。
遠月十傑、第七席。一色 慧だ。
さ、お次は創真くんの料理を食べてみたいな…。
見せてもらうよ。君が皿の上に語る、物語を」