【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第9章 絶頂エモーション.3
「北門、撮影上手くいったらしいな。」
剛士が話しかけてきた。僕は笑顔で答えた。
「うん。力になれたみたいでよかった。」
「そーかよ。」
口に入れた刺身の上に、溶け切ってなかったわさびが乗っていて、鼻がつーんとした。
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食事のあと、車に乗ろうと店から出ると、雨が降っていた。
「雨なんて予報だっけ?」
「いや、知らねえ。」
僕達は駐車場まで駆け出した。
車に乗って、息切れしていたら、剛士が僕の座席の方の窓に、手をついて僕を閉じ込めた。これって壁ドンされてる?
鋭いルビーの瞳に捉えられ、目を逸らせない。
息切れしていたはずなのに、上手く息ができなくて、心臓が暴れだしそうだ。
剛士は、振り絞るような声で、僕に問いかけた。
「……命をかけるような………
そんな、真実の愛を……お前は見つけたのか。」
僕の顔の横にある、剛士の指が、窓ガラスの上で、ぎゅっと握られた。
僕は…………
「わからない……」
僕は瞼を伏せた。
でも……胸が苦しくて、血が沸騰するように心臓が早く動いて……
これって、食後すぐに走ったから?
それとも、その赤いルビーの瞳に射貫かれているから…?
「……そーかよ。」
剛士はそう言って、閉じ込めていた僕を解放して、車のエンジンを入れた。
雨はどんどん強くなっていて、赤信号が滲んで、フロントガラスの水滴は、剛士の涙に見えた。
水滴は、すぐにワイパーで乱暴に拭われ、僕はゆっくりと瞳を閉じた。
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