第2章 scene1:教室
「お疲れ様」
相葉さんが僕をギュッと抱き締めてくれるから、僕も自然と相葉さんの背中に両腕を回した。
「凄く良かったよ」
「ほんとですかぁ?」
ふふ、嬉しい♡
「僕もとっても気持ち良かったです」
“お仕事”だ、ってちゃんと分かってるけど、気持ち良いことに変わりはないもん。
「なんて言うのかな…、病み付きになりそうだよ(笑)」
「そんなぁ…、ありがとうございます♪」
相葉さんのくれた一番の褒め言葉に、僕は素直にお礼を言った。
「あ、そうだ…」
相葉さんが周りを気にしながら、僕の耳元に口を寄せる。
「あのさ、良かったらで構わないんだけど、連絡先交換しない?」
「えっ…?」
「勿論、無理にとは言わないけど…」
「いえ…、大丈夫です」
「マジで? やった♪」
相葉さんか、それまで被っていた“先生”の仮面を外し、クシャッと笑う。
格好いいとは思ってたけど、笑顔はとっても可愛いんだね、相葉さんて…
「ちょっと待ってて下さいね?」
僕は相葉さんの腕から抜け出し、カメラの最終チェックをしている監督さんに「ありがとうございましたぁ」と頭を下げながら、長瀬さんに駆け寄った。
長瀬さんからバスローブを受け取り、それを肩に引っ掛けた僕は、自分のリュックの中を漁り、スマホを取り出した。
「おい、HIME…」
その様子を見ていた長瀬さんが、怪訝そうに僕の肩を叩いた。
長瀬さんが何を言いたいのかは、そこまで短い付き合いでもないから、分かる。
「大丈夫だよ。プライベートとはちゃんと別けてあるから」
長瀬さんは、僕が男優さんと特別な関係を持つことを嫌う。
相葉さんに限らず、ね?
お互いに本気になるのを避けるため…、なんだと思うけど…
残念ながらその心配は無用♪
僕は長瀬さんにニッコリ笑って見せると、僕と同じようにバッグの中を漁る相葉さんに駆け寄った。