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ファンタスティック魔法陣

第1章 ありきたりプロローグ


桜もすっかり舞い散ってしまった四月下旬。百合は、少し寂しくなった桜の木を愛おしそうに撫でながら、昨日の雨が嘘であったかのような青空を見上げてた。
昨日がこんな晴天だったなら、どんなに良かったことだろうか。
百合はそっと桜の木の後ろへ回ると、木の幹に丸を描き、その中に星マークを刻んだ。
「今度こそ成功させてやるわ」
深呼吸をして、刻んだ魔法陣に手をかざす。ゆっくりと覚えた手の呪文を繰り返し唱えた。すると、たちまち目の前には光が満ち、そのまま百合は……

「きーてんのか起きろ百合ー!」
「どひゃああ!!」
打撃した後頭部を手で癒しつつ、教室の床に仰向けになる体勢のまま、天井の蛍光灯をじっと見つめた。
夢……だったのですね……。また魔法は失敗に終わった。現実でも夢でもどっちでもいいから、私に魔法を使わせて!
「蛍光灯なんか凝視して気持ち悪いな百合」
気持ち悪い?私がか?
 百合は体操選手のようなキレある起き上がり、ほこりにまみれたスカートの裾を払う。
「気持ち悪さなら、私なんかよりあんたの方が圧勝よ真奈美」
「百合に言われたくないぜ。私のどこが気持ちわr」
「走り方気持ち悪いのよ。あとね、分かるって言うときオネエみたいな言い方になるところ」
「……地味に嫌だな。ってか私気持ち悪さも地味だな。しかも私の言葉さえぎってまでいいやがって。友達なのかそれでも」
「多分」
「随分あっさりじゃないかよ……;」
今日の会話もくだらないわね。
「私はお先に帰る。真奈美、掃除頼まれて頂戴な」
「え?ヤダって百合。百合この間も私が」
「いいの?……呪っちゃうわよ」
「……はいはい。やっとく。行った行った」
「さすが真奈美。わかってる」
お互い今の関係に進展なんか求めてないのは承知の上でつるんで訳だし。とくに仲間割れはしない。
それ以前に、変人扱いされてる私の相手をしてくれている真奈美は本当にかわいそう。何度嫌われようとしても離れない。不屈の精神の持ち主だと思っている。
最初に言っておくけど、これはあくまで個人的解釈にすぎないからね。

百合が変人扱いされてる理由?
それはこれから分かる……はず。

それは、百合が高校に入学してすぐに起こったある事件へとさかのぼるわけだ。
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