第8章 【Bハロ】ホワイト・バーチ【愛染健十】
ケントside
「ぐっ。今回は、派手にやられたな。」
今日も女の子達と楽しい夜を過ごして食事をしていたら、エクソシストの倫毘沙と竜持に見つかって、街を駆け抜ける大乱闘になった。
だが今回は吸血鬼側が撃退されてしまい、命からがら追っ手を撒いて、気づけば深い霧の立ち込める、知らない森に迷い込んでいた。
「ちょうどいい。ここで少し休ませてもらうとするか。」
俺はジャケットを枝にかけ、大木に寄りかかり目を閉じた。
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主人公side
迷いの森に異物の気配を感じて、お散歩がてら様子を見に行くことにした。
いつものワンピースに、つけていたエプロンを脱いで、ランタンを持ち、ストールを羽織った。履きなれたブーツを履いて、ドアを開ける。
「外は少し肌寒いですからね。」
ずっと独りで居ると、つい独り言が多くなってしまう。
誰も居ない家にいってきますを告げ、私は森へと歩いた。
歩いていると、この森に住む鹿の群れの若長が駆け寄ってきた。
きっと異変の場所まで案内してくれるのだろう。
若長は、若い雄で、立派な角を持つ鹿だ。
わたしの歩幅に合わせて、隣をゆっくり歩いてくれている。
案内された場所は、この鹿たちの群れがよく食事をするシラカバの大木だった。大木の周りには、ほかの鹿たちが様子を伺うようにこちらを見ている。小鳥やリスも木の上に居るみたいだ。彼らが食べた木の実の殻が、大木で眠っている人物の頭に落ちて、彼は目を覚ましたようだった。彼は、澄んだサファイアの瞳で、こちらを一瞥したあと、こう言った。
「随分賑やかだな。俺を見つけてくれたのは君かい?お姫様。」
彼は瞳を細めて、こちらに手を差し出した。
わたしを人間だと思って、捕食しようとしているのだろう。
わたしはしゃがみ込んで、彼に話しかけた。
「あなた、随分酷くやられたのね。吸血鬼かしら。聖水で焼けたあとが残っているわ。」
彼の焼けただれた腕を触ると、彼はわたしの腕を払った。
「触るな。お前も奴らの仲間か。」
先程の柔和さが嘘のように、牙を剥き出して威嚇してきた。
わたしはふっと笑って、彼に微笑んだ。
「いいえ。わたしはエクソシストではないわ。そして、人間でもない。ただの森の魔女よ。手当してあげましょう。いらっしゃい。」