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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第121章 ◇第百二十話◇母の愛と優しい腕【女型の巨人編】


彼の母親の名前は、それしかないと確信するような、不思議な感覚。
それはきっと、リヴァイ兵長のこの腕が、母親の記憶を忘れていなかったからだと思う。

「素敵な名前ですね。」
「そうか?よく分からねぇが。」
「クシェルっていう名前の由来は、優しく抱きしめる、なんですよ。」

だからきっとー。
私はそっとリヴァイ兵長から身体を離すと、いつも私を抱きしめてくれる力強い腕に触れる。

「お母さんが、リヴァイ兵長と一緒にいられた時間は短かったかもしれないけど、
 きっと、ずっと、とても大切に優しく抱きしめていたんですね。」
「さぁ、ベッドで寝てた記憶しかねぇがな。」
「そんなことないですよ。リヴァイ兵長は覚えてなくても、ちゃんとこの腕が覚えてる。
 誰かに優しく抱きしめてもらったことがない人が、誰かを優しく抱きしめることなんて出来ないもの。
 だから私は、リヴァイ兵長がどんな風にお母さんに抱きしめられていたか、この世界で二番目によく知ってるんです。」

リヴァイ兵長のお母さんに私も感謝しなくちゃー。
そう言って微笑めば、力強い腕に、少しだけ強引に抱きしめられた。
一瞬だけ見えたリヴァイ兵長の表情を、私は一生忘れないと思う。
そして、幼い頃から強く生きてきた、本当は弱くあってもよかったはずのこの人を、これからは私が抱きしめていきたいと思った。
優しく、優しく、強く、お母さんが本当はもっとそうしてあげたかったように、ギュッと、強く、優しく、どんな苦労も厭わないほどに深く大きな愛情でー。

「俺も感謝しねぇとな。
 母さんのおかげで、をこうして抱きしめてやれてる。」

私を抱きしめる腕も、声も、少しだけ震えていた。
楽しそうに、嬉しそうに、私の家族がリヴァイ兵長に話しかける度に、少し寂しそうな影が出来ているのに気づいていた。
でも、これからは、無性に家族が恋しくなった時、リヴァイ兵長は自分の腕を見て、お母さんの愛情を、優しい温もりを、思い出すことが出来るだろうか。
感じることが出来るだろうか。
もし、それでも、寂しさが消えないのならー。

「私もずっと、リヴァイ兵長をー。」

抱きしめてあげたいー。
そう続くはずだった言葉は、扉を激しく叩くノックの音に邪魔された。

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