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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第98章 ◇第九十七話◇悪魔との交渉【恋の行方編】


「珍しいですね、お坊ちゃまがこのようなものをお読みになるなんて。」

そう言って、執事がデスクの上に置いていた絵本を手に取る。
偶々、暇すぎて書庫に行ったときに見つけた子供騙しの御伽噺だ。
子供の頃、一番嫌いだった物語。
お金があって美しい王子ではなく、お金もなくただ戦うことしか出来ない騎士を愛するお姫様が、大嫌いだった。
悪魔だってなんだって、権力のあるものがいいに決まっているのだ。
それなのに、わざわざ、騎士を選ぶお姫様の気が知れない。
思わず手に取って持ってきてしまったのはいいものの、読む気にはならず、ずっとデスクの上に置きっぱなしにしていた。

「知ってるか、クレーエ。」

ルーカスは、小さくなっていく馬車を眺めながら言う。

「何でしょう、お坊ちゃま。」
「その物語で、お姫様の大好きな騎士は、お姫様を守るために死ぬんだ。」
「はぁ…、それはそれは…、お労しい。」
「ハッ、それ、本気で言ってるのか?
 そんなことするやつはただの馬鹿だ。他人のために死んで何になる。」
「それほど、大切な方だったのでしょう。
 自分の命にかえても守りたいほど。」
「だから間抜けだと言ってるんだ。
 知ってるか、クレーエ。騎士は、蘇るんだよ。」
「まぁ、なんてことでしょう。それはそれは、喜ばしい。」
「だから、馬鹿だと言ってるんだ。
 騎士はな、お姫様の真実の愛のキスとやらで蘇るんだ。
 お姫様の、命と引き換えになー。」

とうとう、窓の外の景色からの乗っている馬車が消えた。
ルーカスの口の端が、ニヒルに上がる。
あの物語のクライマックスで、お姫様は、泣きながら騎士にキスをした。
すると、騎士の身体は光で包まれ、そして命を蘇らせて目を覚ます。
その傍らで、愛する人のために自らの命を捧げたお姫様が、冷たくなっていることも知らずにー。
あのリヴァイという男も、せいぜい泣き喚けばいい。
自分を愛してしまったばかりに、無残に死んでしまったの亡骸の傍らでー。

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