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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第89章 ◇第八十八話◇ほんのひとときのハッピーエンド【恋の行方編】


新聞記事に面白おかしく書かれたリヴァイ兵長の過去という話の中に、王都地下街にいたときに行動を共にしていた仲間が2人いたことが書いてあった。
名前まではなかったけれど、きっとそのうちの1人が、イザベルという女の子なのだろう。
今のところ、彼女が受けた屈辱のことは記事になっていないようだった。
これからも、その話が世間に出ないことを願う。この世を去って、それでも尚、あの男がしたように、彼女が凌辱されるなんて許せない。
彼女が、リヴァイ兵長にとって、どういう名前で呼ぶ相手だったのかは分からない。
私が知るべきことでもない。
ただ、リヴァイ兵長にとって、彼女がそばにはいない今も、大切で大切で仕方のない存在なのだということは分かっている。
だからきっと、私なんかが、触れてはいけない。
悲しくて、苦しくて、でもきっと、大切な、大切な、宝物の記憶なのだろうからー。

「朝から気になってたんだが、あれは読まねぇのか?」

リヴァイ兵長が指さしたのは、テーブルの上に置いたままの絵本だった。
私の大好きな騎士がいて、最期に命を落としてしまうあの物語。
まさか、それこそ調査兵団の図書室にあるなんて思わなかった。
ところどころ破れていて古いものだった。
後ろに名前が書いてあったから、誰かが読んでいたものなのだろう。
図書室には、壁外に行ったきり主人が帰ってこなかった本も、いくつか置かれている。
きっと、その中のひとつだろう。

「子供の頃、母によく読んでもらってた絵本を見つけて、思わず持ってきたんです。
 でも、読まないと思います。」
「読めばいいじゃねぇか。」
「結末が好きじゃないんです。
 やっぱり、恋は、ハッピーエンドで終わらないと悲しいから。」

言ってから、ハッとした。
今のは、まるで、自分のことを言っているみたいだ。
きっと、リヴァイ兵長に見返りを求めているように届いたはずだ。
だって、小さな息遣いが一瞬止まったのが聞こえたから。
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