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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第89章 ◇第八十八話◇ほんのひとときのハッピーエンド【恋の行方編】


苦い薬に眉を顰めたリヴァイ兵長は、私がコップを渡すと一気に飲み干した。
強引に流し込んだようだ。
もしかして、薬を飲まなくても治せるーのではなくて、薬が苦手なだけなんじゃー。

「なんだ。」
「いえ。」

睨まれたから、目を反らして、クスクス笑った。
こんなにも長い時間をリヴァイ兵長のそばで過ごすのは初めてで、不謹慎にも、私は毎日がとても楽しかった。
リヴァイ兵長の寝顔を見られることも、好き嫌いを知れることも、知らなかったほんの小さな仕草や癖を知れることもー。

「本の続きを読むんじゃなかったのか。」

珍しく、リヴァイ兵長から本の話題を出した。
どうしても、薬が苦手だということを誤魔化したいらしい。
私も気づかなかったフリを少しだけして、リヴァイ兵長からコップを受け取りテーブルの上に置くと、代わりに書庫から持ってきていた分厚い本を手に取った。
童話がオムニバスで語られている本だ。
まさか、調査兵団の書庫にこんなものがあるとは思わなかったが、内容を見て納得した。
これは、子供を寝かしつけるために改編された夢のあるお話ではなく、原作のようだった。
だから、とても残酷で、だけどとても美しいー。

「どこまで読んだんでしたっけ?」

毛布をめくったリヴァイ兵長が、端に避けて出来たベッドの空いたスペースに腰を降ろし、本をめくりながら訊ねる。

「白い女が、絞め殺されたところだ。」
「そうでしたね、白雪姫が腰紐を売られたところですね。」

何とも物騒な言い方をするのがリヴァイ兵長らしくて、苦笑しながら、続きのページを開いた。
リヴァイ兵長の手が私の肩を抱き寄せて、手元の本を見やすいようにする。
ベッドの上で並んで座って、肩まで抱かれながら本を読み聞かせるようになって、3日が経つ。
まだまだ慣れそうにない。慣れるとも思えない。
緊張しながら、私は本の続きを読み聞かせる。
明日からやっとシャワーが解禁される予定だが、それ以外はベッドから降りることを許されないリヴァイ兵長の一日は長い。
何か暇つぶしは出来ないかと思って、持ってきたのが、図書室で見つけたこのグリム童話の本だった。
せめて読書でもすれば、時間を潰せると思ってー。
それが、どういう流れだったか、私が読み聞かせることになって、挿絵が見えないのが気に入らないと言うリヴァイ兵長に、強引にベッドに来るように言われてー。
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