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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第85章 ◇第八十四話◇あなたが生きているだけで…【恋の行方編】


そばを離れるなーそう言われていたのに、リヴァイ兵長の元から離れてしまって、こんな状況になっている。
今度こそ、私は、リヴァイ兵長の指示に従うべきだと思い直した。
それに、今のリヴァイ兵長をひとりにしてしまったら、消えていなくなってしまうような、そんな不安も過った。

「分かりました。どこにも行きませんから、少しだけ手を離してもらえますか?」
「…約束だ。」
「はい。絶対に、離れません。」

渋々だったが、リヴァイ兵長の手が離れる。
私は、ドレスの裾を膝上のあたりから千切った。
泥水が跳ねて汚れている裾の方も千切って捨てて、太もものあたりはかろうじてまだ無事だったドレスの布を持って、私はもう一度、リヴァイ兵長の隣にゆっくりと腰を降ろした。
そして、眉の傷にそっと触れた。

「そんなに千切っちまって、寒くねぇのか。」
「大丈夫ですよ、これくらい。
 それより、どうして、あんな無理をしたんですか。
 本当に、死んじゃうかもしれなかったのに…。」
「死んでも守るって言っただろ。」

分かりきったことを言うなー、リヴァイ兵長はそう思ってるみたいだった。
パーティー会場でリヴァイ兵長は確かにそう言ってくれた。
それが、今のこの状況を予感して出てきた言葉かは分からない。
でもー。

「そんなの…っ、本当に死んで守るのなんて、ルルだけで充分です。
 もう…、大切な人が、私のために死ぬのは、嫌です…。」

リヴァイ兵長を責めたかったわけじゃない。
感謝するべきだったのだろう。
だって、私は、本当は嬉しかったから。
他の誰でもなくて、私を助けに来てくれたのがリヴァイ兵長だったことも、あんな最低な条件を呑んでも私を守ってくれたことも、嬉しかった。
そんな自分が、許せなかったー。
唇を噛んだ私に気づいたのか、リヴァイ兵長はゆっくりと身体を起こした。
そしてー。

「そうだな。悪かった。死なねぇから、泣くな。」

堪えきれず頬を流れ出した涙を、リヴァイ兵長の指が拭う。
泣いたらいけない、そう思って必死に堪えようとしても、優しい指が温かくて、ここにリヴァイ兵長がいることが、生きていることに安心して、涙は後から後から溢れては零れて落ちていった。

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