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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第84章 ◇第八十三話◇愛しい騎士を悲劇から救って【恋の行方編】


お願いー、逃げると言ってくれー。
私は心の中で必死に願った。
すると、リヴァイ兵長の腕が少し動いた。
このまま離してくれる、最低な女だと捨てていってくれる―そう思った。
不思議と怖くもなくて、不安も悲しみもなくて、ただただ安心した。
これで、リヴァイ兵長が傷つけられることはないと、強張っていた私の身体からは力が抜けていくのが分かった。
それなのにー。

「おい、俺は、まだ、死んじゃいねぇぞ。
 勝手に、やめんじゃねぇ。」

緩んだはずのリヴァイ兵長の腕は、私をさらに強く自分の胸に押し付けるように抱き直しただけだった。

「どう、して…?」
「泣いちまうくらいなら、嘘なんか吐くんじゃねーよ。」
「ちが…っ。本当に…、嫌いなんですっ。だから…っ!」
「あぁ、分かった。分かったから、おとなしくしてろ。」

リヴァイ兵長はそう言って、また抱きしめる腕の力を強めた。
何も、分かってないー。
だって、まだ、堪える気だ。
身体がボロボロで、背中を鉄パイプで殴られて、無事なはずない。
きっと、息をするのだってやっとだー。
それなのにー。
金髪の男達も、死んでもおかしくない身体でまだ堪えようとしているリヴァイ兵長の気迫に押されているようだった。
それでも、人類最強の男を殴れるのは今しかないーと引きつった笑みを浮かべて鉄パイプを振り上げる。

「お願いです…っ、やめてください…っ。
 大嫌いだから…、私みたいな部下、早く見捨ててください…っ。」

泣きながら懇願しても、金髪の男達は無抵抗の身体をいたぶることを止めないし、リヴァイ兵長も抵抗しようとはしてくれない。
惨い拷問に、涙が止まらなかった。
リヴァイ兵長の命の火は、今、奇跡的にほんの少し灯っているだけだ。
それは、天井に空いた穴から、ときどき落ちてくる雨水たった一滴で消えてしまうくらいに、脆い火。
もうー、本当に死んでしまうー。
その時、唐突に、私は思い出した。
あの大好きだった物語の結末をー。大好きな騎士がどうなったのかをー。

「私を殺してっ!!!!」

私の命を懸けた叫びが、廃工場に響いた。
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