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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第73章 ◇第七十二話◇雨にまぎれて君を奪えたら【恋の行方編】


ジャンの足が止まったのは、私に合わせたのか、それとも別に理由があったのか。
兵門の向こうに見える景色が、土砂降りの雨で白く歪んでいた。

「聞かせてください。」
「何?」
「結婚もやめて、調査兵団で巨人と死ぬ思いして戦って、
 リヴァイ兵長が好きだからって苦しんで、それでも、幸せですか?」
「うん、幸せ。」
「もう一度、聞きます。
 自分から逃げるような男を好きでいて、命を懸けるなんて馬鹿みたいだと思います。
 それでも、さんは、幸せを捨ててただの部下になって、本当に幸せだと言えますか?」
「うん、言えるよ、私は幸せー。」
「じゃあ、なんで、泣いてんだよっ!!」

ジャンの怒鳴り声は、土砂降りの雨にかき消されなかった。
だから、耳と心が、痛い。
足元に、さっきまでジャンが持っていた傘が転がっていた。
雨に濡れていくジャンの腕の中で、私は初めて自分が泣いていたのだと気づく。
私の涙で滲んでいくジャンの兵団服が私の視界を奪う。
もう、見えない。
一本の傘を差したリヴァイ兵長とジーニーが抱き合っているところなんてー。
もう、見えないのに、どうしてー。
目を閉じても、浮かんできてしまうのだろう。
激しい雨は、耳元からかき消してくれないのだろう。
優しいリヴァイ兵長の顔とか、行くなと言ってくれたリヴァイ兵長の声とかー。

「俺はリヴァイ兵長みたいに強くないし、肩書も何もない。
 でも、好きな女を泣かせるようなことはしない、絶対に…!」

ジャンにキスをされた。
強引に押し付けられる唇から、ジャンの本気が、真っすぐな気持ちが伝わってくる。
私とジャンの身体を叩きつける土砂降りの雨が、2人をあっという間にびしょ濡れにしていく。
誰の涙かもわからない雫が、私とジャンの頬を伝って落ちていく。

(寒い…。)

雨に濡れて、孤独で、私もジャンも、きっと今、とても寒い。
暖めてくれる誰かが、必要なのかもしれないー。
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