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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第68章 ◇第六十七話◇シュトレンと恋心【恋の行方編】


あのときは、私とリヴァイ兵長はまだお互いのことを何も知らなかった。
今だって、ほとんど知らないけれど、でも、リヴァイ兵長はとても優しい人だということを知ってる。
冷たい言葉の裏に、彼なりの想いがあることを知っている。
それに、手の大きさ、抱きしめる腕の力強さ、唇のー。
忘れたくても消えてくれない身体に残った感覚がある。あのときの私よりも、今の私の方が絶対にリヴァイ兵長を知っている。
でも、今の方が、リヴァイ兵長は遠い。
遠くて、遠くて、遠くて、絶対に届かない人だ。
隣を歩いているのに、私はどこか遠い場所から端正な横顔を眺めているような気分になる。
あのとき、リヴァイ兵長と一緒にトロスト区を歩くなんて二度と御免だと思った。
私は今、あの時よりも強く、そう願っているー。

「あ、」

ふと、思い出した。
リヴァイ兵長が連れて行ってくれた紅茶の葉を売っているあのお店。
あそこに、美味しそうなお菓子も置いてあったはずだ。
それに、家から持ってきていた紅茶の葉がなくなりかけていて、買い足さないといけないと思っていたのだ。
自分のお財布も持ってきているし、ついでに買って帰ればいい。

「リヴァイ兵長っ!あのお店に行きましょうっ!」

思いついたことが嬉しくて、駆け出しそうになる心のままリヴァイ兵長の手を掴もうとした私は、慌ててその手を引っ込めた。
急にテンションを上げた私に驚いたのか、訝しげな顔をするリヴァイ兵長に、誤魔化すように笑顔を作る。

「あの紅茶のお店に行きましょうよっ。
 美味しそうなお菓子もありましたよねっ。」
「あぁ、そうだったか。」
「そうだったんですっ。」

ゆっくり歩くリヴァイ兵長を残して、私はスキップで紅茶の葉のお店に向かう。
楽しそうな背中を見せつけていないと、偽物のただの部下であることがバレてしまいそうだった。
避けられるのは、とても悲しかった。
そんなの、残酷な時間だと信じて疑わなかった。
でも、泣いてお願いして上司のフリをしてもらっている今、私は惨めで、やっぱり残酷な時間だと信じてしまいそうになる。
でも、それじゃダメだ。
自分の選択を、後悔していても、後悔したくない。
惨めでも、可哀そうでも、ただの部下でもなんでもいいから、好きな人のそばにいたいーそう決めたのだから。
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