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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第65章 ◇第六十四話◇なんて悲劇的で美しい恋物語を君は【恋の行方編】


「この戦術の意味を教えてもらえますか?」

テーブルを挟んで座るミケ分隊長に見えるように、広げた資料を反対にして置いた。
ミケ分隊長が覗き込んで確認し始めたのは、エルヴィン団長がまだ分隊長だったときに書いた資料だった。
壁外で巨人に出くわしたときの戦闘回避方法や、戦闘になったときの戦術等が詳しく書いてあるのだけれど、経験値の差か、はたまた頭の出来が違いすぎるのか、どうしてそうなるのかが分からなくてずっと頭をひねっていたのだ。
だから、せっかくだから勉強を見てくれるという嬉しい提案をミケ分隊長がしてくれたとき、すぐにこの資料のことを思い出した。
エルヴィン団長が分隊長の頃から第一線で活躍してきているミケ分隊長なら、この戦術の意味を理解しているはずだと思った。

「あぁ、これはなー。」

資料を読み終えて顔を上げたミケ分隊長は、ジャケットの袖口を押し上げて腕を出しながら口を開いた。
やっぱり、エルヴィン団長が書いた意味の分からない文章を理解したようだった。
資料を指さしながら、巨人の数や場所に対してどのような配置が一番効率的なのかの説明を始めたミケ分隊長だったが、私はその右の手首のあたりに見覚えのある絆創膏を見つけて目が離せなくなった。

「その絆創膏…。」

無意識に声が出ていた。
それは、私が頬を切ってしまったときに、ミケ分隊長が貼ってくれたあの絆創膏だった。
そしてー。
もう遠い昔のようで、でも、ほんの昨日のことのような、そんな記憶が蘇る。
あれは、ナナバ班と一緒に壁外任務に出た私が兵舎に帰ってきた後のことだったはずだ。
数体同時に現れた奇行種の討伐に手間どり、手の甲に怪我をしてしまった私は怪我をそのままにして部屋に戻っていた。
そこに、壁外任務組が帰ってきたことを知ったルルが「おつかれ!」と部屋に会いに来てくれた。
そして、私の手の甲の怪我を見て「傷が残っちゃうよ。」と困ったように貼ってくれた絆創膏。
今、ミケ分隊長の手の甲に貼ってある絆創膏も、あのときのと同じだ。
気づかなかったけれど、おそらく、私の頬にミケ分隊長が貼ってくれたあの絆創膏もー。

「あぁ…、訓練のときに切ってしまって。
 久しぶりに絆創膏を貼ってみたんだ。」

照れ臭かったのか、ミケ分隊長は言いながら反対の手で絆創膏を貼ってある右手首を隠してしまった。
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