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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第55章 ◇第五十四話◇魚も溺れる夜【恋の行方編】


どれくらいそうしていたか分からないけれど、ようやく唇が離れたときには、私もリヴァイ兵長も肩で息をしていた。
一度は生き返った身体にもう一度酸素を取り込んで、息を整えた後、私はゆっくり口を開いた。

「私の、好きな人は…、口が悪いです。」
「そうみてぇだな。お前は趣味が悪ぃ。」
「目も怖くて、いつも怒ってるみたいで、
 優しく笑いかけられたことなんて、一度もありません。」
「それは残念だったな。」
「でも、みんなが彼についていくのは、
 その人が人類最強の兵士って謳われてるからだけじゃない。」
「…おい、何言ってやがる。」

私の言葉に違和感を覚えたリヴァイ兵長が、片眉を上げた。
そこから先を、リヴァイ兵長は望んでいないかもしれない。
でも、私は続けた。

「誰よりも強くて、誰よりも優しいから。
 厳しい態度も言葉も、私達のためだってみんな知ってるから、だからー。」
「待て。何を言ってー。」
「調査兵団に入団してしまって不安で眠れない夜にそばにいてくれたのも、
 大切な友人を亡くして寂しくて悲しくて苦しくて仕方がないときもそう…、
 私の命を救ってくれたのも、いつだってその人だった…。」
「…っ。」

リヴァイ兵長はなぜか苦しそうには顔を歪めていた。
私はそこで止めなければいけなかったのだと思う。
でも、もう止められなかったし、ちゃんと知っていてほしいと思ってしまった。
勘違いされるくらいなら、これ以上傷つくくらいなら、ここで終わりにしたいと本気で思ってしまった。
終わりにするのではなくて、終わりにされるのだということも、それがどんなにツラいことかも知らないで、私はー。

「私が好きなのは…、リヴァイ兵長です…。」

ずっと云いたくて、云えなくて、胸の中に閉じ込めていた想いが、声になって唇から零れた瞬間、私の瞳から涙が一粒落ちた。
一粒だけだった涙は、またひとつ、またひとつ、流れて落ちては頬を濡らしていく。
思わず、だったのかもしれない。優しいリヴァイ兵長が戻ってきて、私の頬を濡らす涙に触れようとした。
でも、その手は頬に触れる直前に止まってしまう。

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