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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第43章 ◇第四十二話◇優しい声の使者【調査兵団入団編】


「リヴァイ兵長…。」

壁に触れて、無意識に出た言葉に自分で驚く。
私はまだ、リヴァイ兵長のことを想っているようだ。
なんと愚かだろうか。
もう二度と会えないし、そもそも彼はー。
不意に蘇る、リヴァイ兵長の胸板の厚みや腕が腰に触れる感触、耳元にかかる息遣い。
調査兵団を辞めた日、リヴァイ兵長はどうして私を抱きしめたんだろう。
調査兵団からも、大切な仲間からも逃げて、全てを投げ出した弱い私を、どうして。
「そのままでいい」と———。
離さない、とばかりにギュッと、ギュッと抱きしめた力強い腕は、まるで「行くな。」と言っているみたいでー。

(そんなわけないか。)

自嘲気味な笑みが漏れる。
あの後、リヴァイ兵長は私を突き放すみたいに身体を離したじゃないか。
そして、部屋から出て行けとばかりに、エルヴィン団長への挨拶は済ませたのかと言い出してー。
最後は、部屋を出る私と目も合わせてくれなかった。
冷たい壁からそっと手を離し、私はまた歩き出す。
高い高い壁に沿って歩き続けたら、どこに辿り着くのだろう。
それはまた高い壁の続く世界だと知って、調査兵団は壁の外へ飛んでいくのだろうな。
そんなことを考えて、私は小さく首を横に振る。
もう、彼らのことを思い出したって意味がない。
私は、あの場所から逃げてきた身で、元々、眩しいくらいに強いあの人達の仲間になれるような特別な人間ではなかったのだ。
見送りに来てくれたのは、エルドやハンジ班の人達だけだった。
リヴァイ兵長だけじゃなくて、ハンジさんも、ペトラもいなかった。
エルヴィン団長に挨拶を済ませて兵舎の門を出て行くとき、当然見送りに来てくれると思っていたわけではないけれど、でも、やっぱり、慕っていた2人がいなかったのは寂しかった。
オルオ達は、忙しいのだと言っていたけれど、きっとこんな弱い私に呆れて、顔も見たくなかったのだと思う。
しばらくのんびり歩いていると、後ろから馬車が近づいてくるような音がした。
ストヘス区の辺鄙な場所であるこんなところに馬車でやってくるのは、暇を持て余している貴族くらいだと思う。
気持ちのいい天気だから彼らも散歩なのかもしれない。
馬車の音は、私の少し後ろの方で止まった。誰かが降りてきたような気配を感じて、なんとなく振り返って、私は驚愕した。

「え。」

馬車から降りて、私をまっすぐに見据えていたのはー。
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