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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第42章 ◇第四十一話◇まだそばにいたい【調査兵団入団編】


真面目なクリスタが自分のために訓練をサボろうとしていることなんて知りもしない私は、リヴァイ兵長の執務室兼自室を訪れていた。
部屋の扉を開いたリヴァイ兵長は、兵団服を脱いで私服になっている私を見てから、すぐに目を反らした。

「何だ。」

リヴァイ兵長は、扉を開けたままの格好で言う。
部屋に招き入れようとはせず、扉で用事を済ませようとしているのは明らかで、胸が痛んだ。
でもそれは、私のせいだ。
あの日からずっと、私は逃げていた。
リヴァイ兵長が差し伸べようとしてくれた手からも、ハンジさんやペトラ達がかけてくれた優しさからも、ずっと逃げていた。
怖かったのだ。
彼らの手をとって、そして縋ってしまったら、私はもう二度と自分一人では立ち上がれない気がして。
それが怖かった。
だって、人間は結局独りなのだからー。

「これ、私にはもう必要ないので、リヴァイ兵長に差し上げます。
 手を怪我させてしまったお詫びも兼ねて、
 最後に部下として兵長にお礼の紅茶を入れさせてください。」

私が紅茶の葉の入った袋を見せると、リヴァイ兵長の表情がようやく柔らいだ気がした。
一瞬、断ろうとしたように見えたリヴァイ兵長だったけれど、扉を大きく開いて中に招き入れてくれる。
久しぶりに入った兵団内のリヴァイ兵長の執務室兼自室は、デスクの上どころか、テーブルの上にもたくさんの書類が積み上げられていた。
整理整頓されているを通り越して何もない部屋だから、余計に山のように積まれた書類の主張が強い。

「悪いな、助かる。」

リヴァイ兵長はそう言いながら、テーブルの上にある書類を片付けだす。
慌てて、座って待っていてくれとお願いした私は、まずはテーブルの上の書類をひとつにまとめてデスクの上に乗せた。
兵団に入ってすぐに、リヴァイ兵長が溜めに溜めた書類仕事を押し付けられたことがあったっけ。
それは確か、歓迎会の夜だった。
あれからそんなに経っていないのに、遠い昔のように感じてもの悲しい気持ちになった。
明日からはもう二度と、この書類の山を手伝わされることはないのだと思うと、寂しい気持ちになる。

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