第41章 ◇第四十話◇それぞれの眠れない夜【調査兵団入団編】

なかなか戻らないとルルを心配して迎えに行ったリヴァイが鬼のような顔をして戻ってくるまで、そこまで時間はかかっていなかったと思う。
むしろ、早く戻ってきたと思ったくらいだ。
リヴァイの片腕に抱えられたは、顔色が真っ青を通り越して真っ白になっていて、その瞳に地獄を映してしまったのだろうことはすぐに理解できた。
ペトラ達が詳細を知るのは拠点に戻ってからだったけれど、何が起きたのかは、の様子だけで充分すぎるほど察せた。

「森の奥に巨人の大群が見えた。そのうち数体がこっちに向かってきてる。
　ザッと7体か…。」

荷馬車にを乗せてから、リヴァイがハンジにした報告に、ペトラ達は絶句した。
その中から逃れて、2人無事で戻ってこられただけ上出来だと、後でハンジが言っていたくらいだ。
悪夢のような報告を聞き、すぐに拠点への帰還準備をしようとするハンジに、リヴァイは驚くことを言った。

「おれは今から、ルルを…、助けに行ってくる。
　お前らは、先に戻っててくれ。」

言葉の途中、リヴァイが見たのはの姿だった。
彼のその言葉も行動も、荷馬車の上で呆然としている彼女のためだけにあったに違いない。
だって、ざっと数えて7体も巨人がいて、さらにその向こうには巨人の大群がいることが分かっているのに、そんな森の中に戻るなんて自殺行為だ。
それに、の様子から、ルルはの生死はもう絶望的。いや、きっともう死んでいるのだろうことくらいハンジ達にだって想像がついていた。
必死に止めるハンジを振り切り、後で合流するとだけ告げてリヴァイは地獄へと戻って行ってしまった。
仕方なくペトラ達は帰還準備を始め、リヴァイだけを残して、いや、リヴァイとルルを残して拠点へと戻った。
それからほどなくしてだった。
下半身と片腕をなくしたルルを“助けて”、リヴァイが戻ってきたのはー。