第1章 ごりっこりの短編です…
助けてください。神様。仏様。お館様。
そう唱えながら恋人である冨岡義勇の邸宅に向かうのは、つい最近恋の呼吸を使う、甘露寺蜜璃の継子となった娘、恋原奏である。何故向かいたくないか。というと、絶賛喧嘩中なのである。
ただでさえ口下手で自分の感情を表に出さない男が、恋人が出来たからと言って簡単に変わるわけではない。そのことを師範である甘露寺に愚痴っていたら、何をおせっかいしたのか、甘露寺から富岡本人へ指導(辞めてくれ。)が入り…
「恋原は、俺には言ってくれんのか。」と、よくわからない拗ねをされ、しばらく口を(ただでさえ喋らないのに。)聞いてくれなくなってしまった。甘露寺は「ごめんね!ごめんね!」と涙目になりながら謝ってくれたし、(後ろにいる蛇柱様に睨まれたし、)全然気にもとめてない。