第3章 お金より大切な物
師匠と呼ばれたのは、長い白髪を三つ編みにして首に巻いた老人だった。何かよたよた歩いている。
「じじいはすっこんでろ!!」
「ふぁふぁふぁ。そうはいかん。これでもわしは、この娘たちの師匠だぞ。弟子のピンチに駆けつけない師匠なぞ、おらぬわい」
「あなたにもお金を出すわ。あの娘たちを倒してちょうだい」
「ほう、今すぐ渡せるか?」
「ええ、もちろんよ」
令嬢はバッグから札束を出し、師匠に渡した。師匠は中の札を確認すると、ニヤリと笑った。
「まさかあのじいさん、歌姫たちを倒すつもりか?!やめろ!!」
「ふぁふぁふぁ」
満足そうに笑うと、歌姫たちと戦っている格闘家に渡した。
「わしからの報酬だ。あの娘たちの味方をしてやってくれ。わしも戦う」
札束を受け取った格闘家が令嬢に向き直る。
「悪く思うなよ」
「ちょっと!どういうつもり?!おじいさん、私はあなたに渡したのよ?!」
「ああ、確かにもらった。だからわしはその金で、この男を雇った。いいか、娘さん。何でも金で解決できると思っとると、こういう目にあうんじゃぞ」
「師匠…!」
「お前たち、強くなったな。じゃが、まだまだじゃ。あの程度でくたばっとるようでは、この男たちを守れんぞ」
「「はい!」」
「姉さん、大丈夫?いける?」
「もちろんよ!」
「今度は俺も、加勢するぜ」
「僕もー!ハッスルハッスルー!マッスルマッスルー!」
「俺もやるぜ。愛しいレディーに守られてるだけなんて、男が廃るってもんだろ?あー?」
「にゃぁああああ!!」
一松の鳴き声で、猫たちが集まった。
「あは。僕も負けてられないな」
「ライジングしちゃうよ?!」
「そうだな。俺たちを怒らせるとどれだけ怖いか、思い知らさないとね」
「「皆さん…!!」」
「こらこら、お前たち。わしが教えたことを忘れたか?五獣拳と、お前には土そら、これじゃ!」
そう言って、カラ松が推している歌姫に、酒が入ったひょうたんを渡した。
「はい、師匠!」
歌姫たちがそれぞれ五獣拳の型に構える(蛇、虎、鶴、龍、豹)。そしてカラ松が推す歌姫は酔拳。ひょうたんの酒を飲んだ歌姫が構えた。
「ふふ…。いくわよ?」
師匠やおそ松たちの加勢で力を得た歌姫たちの動きは、さっきとは比べ物にならないくらいによくなった。