第1章 生きて
目の前に赤犬の拳が迫る
意味が分からなかった、思考が追いつかない。
分かったことは
_よかった、エースをこれで助けられる。
でも私死ぬのかな、赤犬のこれ食らったら死にそうだな。
嫌だなぁ、エースを折角助けられるかもしれないっていうのに、エースに折角会えたのに。
目に入るのはルフィを庇うエースの後ろ姿で、その背中のマークはよく似合っている
そうしてくるりと横向きに落ちながらぼんやりと死を覚悟した時
後ろから衝撃が走る
だが、思っていたほどではなくて..リュックが破けて、たぷんと水の音がした。
『一応持っとけよ、これ』
『..えと、なんですか、これ』
『限定的な使い方だが対能力者用の盾みたいなもんだ、この中に海水が入っていて、強い衝撃を与えるとタンクの水がかかり能力を無効化し、横のホースから...』
衝撃と水圧でエースの背中にゴフッ、とぶつかる。
「なっ」
エースの視線がこちらを捉える
それに顔が赤くなるのを感じながら、そんな場合じゃないと赤犬の方を振り向けば
_海水で彼はずぶ濡れになっていた
「何もんじゃ、娘..どこから現れた...!」
こ、怖ーーー!!!???
すっと白ひげが後ろから赤犬を殴り飛ばす
「何を言われようが構わねぇ。生きろ、エース!」
白ひげが叫ぶ
「...オヤジィ...!」
ジンベエもじっとこちらを見る
ふたたびエースはルフィを抱えて走り出した
私?頑張ってついて行ってる
「娘さん、あんた一体..」
「そ、その話は後で...はぁ..ハァッ」
元々運動音痴なのにこんな無茶するから、すっかり息が上がっていた
「そんな様子でよく戦場にきたもんじゃ..」
浮遊感が私を襲う。ジンベエさんに俵担ぎされていた
「ちとキツイじゃろうが我慢せい、エースさんを助けて貰って感謝しとる、責任もってワシが船に送り届けよう」
「あっ、ありがとうございます」
「その通りだ、そんな調子で戦争にきた奴、普通なら見捨ててるが..助かった、ありがとう...!!」
エースは真剣な顔で前だけ向いたまま、そう私に告げた
暫く担がれていると、
船に早く乗れ!とバタバタとたくさんの人が走り回ってるのが見える。
「ワシが逃がさんゆうたら逃げるのを諦めんかアホンダラ」
あと少しのところで、赤犬はやってきた。