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Emotional Reliable

第12章 エピローグ.Reliance



同じ頃、凛と汐は鮫柄の寮の凛の部屋でローテーブルを囲んでいた。
土曜日の午後。この日は人が少なかった。
凛と同室の似鳥も外出していて不在だった。

「なんで俺がお前の夏休みの宿題手伝わなきゃいけねぇんだよ」
「手伝ってとは言ってないよ!教えてとは言ったけど」
「どっちも同じじゃねぇか」
そう文句を言いながら隣に座る汐の頬をシャープペンシルでつついた。

「...で?あとどれくらい残ってんだ?」
「あとこれだけだよ」
テーブルの上にはノートと全文が英語の小冊子。

「なんだこれ?」
小冊子をパラパラめくりながら尋ねた。
ところどころマーカーで線が引いてあり、その下には綺麗で可愛らしい女の子の字で意味が書いてあった。

「サイドリーダー。これをノートに全文意訳で日本語訳するの」
「ふぅん...めんどくさそうだな」
「うーん、ま...めんどくさいかな。...凛くんはないの?」
「あー...、似たようなもんはあった」

一番最後に片付けた宿題を思い起こす。
他のクラスメートがサイドリーダーの全訳であるのに対して、帰国子女である凛は別の宿題を課されていた。
全文英語の本を読んでその内容や感想をレポート用紙5枚分に英語でまとめる、というものだった。
いわば、国語の宿題の読書感想文の英語版。

「宿題は自分でやんなきゃ意味ねぇが、もしわかんねぇとことかあったら訊けよ」
凛は読みかけの本を開いた。
はぁい、と返事をして汐は宿題と向き合い始めた。


しばらくして汐の手が止まった。


(ここ、なんて訳せばいいんだろ...)

形容詞がふたつ並んでいる。
それぞれの単語の意味はわかるが並んでいるとどう訳していいか分からない。
教えてもらおうと思い、凛の方を向く。

「ねぇ凛く、...」
隣を見たら、凛の寝顔。
きっと午前中の部活の疲労がやってきたのだろう。
汐のすぐ横で本を開いたまま静かに寝息をたてている。


(まつ毛なが...下まつ毛も...。女の子みたい、ほんとに綺麗な顔してる...)

おもわずケータイを取り出して凛の寝顔をおさめてしまった。
思いの外シャッター音が大きかった。その音で凛は目を覚ました。

「撮っただろ...」
「撮ってません」
「うそつけ」
「撮りました」
「素直かよ」

寝顔の写真を撮られたことをさほど気にした様子もなく、凛は汐の宿題の進捗状況を見た。
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