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Emotional Reliable

第12章 エピローグ.Reliance


汐から電話で好きな人ができたと伝えられた日の翌日。
璃保と汐はカフェテリアで昼食を摂っていた。
璃保は大盛りのボンゴレ、汐はバンズがフォカッチャのバーガーをそれぞれ食べ終わり、コーヒーを飲んでいた。

「...汐、昨日電話で好きな人ができたって言ってたけど、誰なの?」
単刀直入に切り出したのは璃保だった。
さすがにちょっとストレートすぎたか、と心の隅の方で反省しながら汐の言葉を待った。

「鮫柄水泳部の...松岡凛くん...」

やっぱり、と思ったが璃保は表情を変えない。
汐が、自分が泳げないことを他人に話すなんてこれまでありえなかった。
だが、汐が泳げないことを凛は知っていた。
そのことを汐から直接聞いたと言っていた。
さらに溺れた汐を凛が助けたこと、風邪をひいた汐のもとへお見舞いに来たことなどを考えると、凛と汐が単なる友達だとは信じ難い。
お互いもっと特別な感情を抱いているということは想像に容易い。

「昨日汐んとこお見舞いに来たあの赤髪の...?」
「...うん。ね、璃保。あたし〝好き〟って気持ち、ようやく理解できた。ここがあったかくなって、ふわふわしてるんだけど、時々きゅって苦しくなって、もっと一緒にいたい、声が聞きたい、あたしを見てって思うの」

ここ、と言った時に汐は胸元に軽く握った拳をあてた。
幸せそうに微笑む汐。これほどまで乙女な汐は初めてだった。
心の底から可愛いと思った。

「彼...凛だっけ?確かに泳ぐの速くてイケメンよね。けど彼怖そうじゃない?」
数ヶ月前に同じ質問を汐にぶつけた。汐は覚えているだろうか。

「怖い人じゃないよ!不器用だけどとっても優しい人だよ」
前回は曖昧にしていたのに、今回は優しい人だと断言した。
その声音や表情からわかる。汐は本当に凛のことが好きなのだろう。



「あの子は本当に好きな人に出会えた。彼も汐のこととても大切にしてくれてる」

松岡凛。彼は汐のことを幸せにするだろう。
璃保はそう信じている。

「だから海子、心配いらないわ」
青く光る美しい墓に眠る海子に白いライラックの花を手向けた。
汐と似た雰囲気を纒う容貌をした海子が笑った気がした。
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