第20章 提案、そして新たな勝負(巻島目線)
予定を決め富永が自室へ戻ると、東堂は雑誌を自身の鞄に片付けながら俺へと問いかける。
「なぁ巻ちゃん。巻ちゃんはいつから茉璃のことが好きなのだ?」
「急になんショ。夜に布団並べて恋バナとか、修学旅行かよ」
「良いではないか、たまにはこんな話も」
そんな東堂の言葉に、俺は素直に今までの経緯を話すことにした。
東堂は適当に相槌を打ちながら俺の話を真剣に聞いてくれる。
思えば、田所や金城には可愛い子がいる程度のことは話していたが、こうして好きだという気持ちを他人に話したのは初めてだ。
「巻ちゃんは告白はしないのか?」
母と同じことを聞いてくる東堂に言葉を詰まらせる。
母の前では告白するとは言ったものの、東堂の前ではそう簡単にその言葉を発することはできない。
だって、東堂も富永のことを好きなのだから。
それにいつ告白するかなど全く決めていないのだ。
「告白、しちまってもいいのかよ」
「好きなのだろう?だったら誰かに盗られて後悔してしまう前にするしかあるまい。それに…」
東堂は何かを言いかけて口を噤む。
そんな東堂を不思議に思っていると、先程までの真剣な表情に反し、いつものおちゃらけた表情を見せる。
「まぁ、巻ちゃんの告白が成功するとも限らないしなー!」
もちろんわかっていることだが、改めて東堂に言われると少し腹が立つ。
だが言ってることはごもっともだ。
「よし、巻ちゃん。決めたぞ。明日と明後日のどこかで2人きりになるタイミングがあったらその時告白をしろ」
「ハァ!?何勝手に決めてるッショ!」
「まぁそんな隙など見せないがな!ワッハッハー!」
冗談に聞こえるがきっと彼は本気なのだろう。
東堂がこういう冗談を言わないことはわかっている。
そばにいられなくなってしまうなら一生心の中にしまっておこうかと考えてしまっていた俺にはいいきっかけだった。
「…わかった。隙を見つけて告白するショ。だがそれはお前も同じだ。お前も2人きりになったら告白をする。これで公平ショ」
俺がそういうと東堂は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに了承した。
この瞬間、明日から2日間、俺らは自転車の上ではない新たな勝負をすることになったのだった。