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蝶と蜘蛛

第13章 大会当日。


大会当日。
私は携帯の着信音を合図に家を出た。
家を出ると先程の電話の主が私に向かって挨拶をする。

「はよっす」
『おはようございます。巻島さん』

雲一つない晴天の下、私は迎えに来てくれた巻島さんとともに埼玉へと向かう。
行きの電車、そんなに会話が多いわけでもないが、それがなんだか心地よかった。

多少の雑談をしながら電車に揺られているとあっという間に目的地に到着した。

会場に着くと結構な人数で混雑しておりすぐにでもはぐれてしまいそうだ。
必死に巻島さんを追いかけていると巻島さんがこちらを見て

「はぐれんなよ?」

と自らの服の裾を差し出してきた。

「ここ、掴んでるショ」

ドキドキしながらも素直にちょこんと裾につかまる私を見て、巻島さんは満足したような表情で歩みを進める。

すると、向こうの方から聞き覚えのある騒がしい声が聞こえてきた。

「お!巻ちゃーん!!こっちだ!受付はしっかり済ませたか?」
「うるせぇショ、東堂。お前は俺の母親か!」

私の思考は停止寸前だった。
頭の中で今の状況が理解できていない私にいち早く気が付いたのは巻島さんだった。

「おっと、紹介が遅れたショ。東堂、この子が新しくうちのマネージャーになった…」
「茉璃…?」

巻島さんが紹介し終える前に尽八は驚いたような表情で私の名前を呼ぶ。
そして尽八が私の名前を呼んだことで巻島さんも驚いた表情を浮かべる。

『えっと…お2人のご関係は…?』
「腐れ縁ショ」
「酷いぞ巻ちゃん!!俺らは親友と書いてライバルだ!」
「で、お前らの関係はなんなんショ?」
「『幼馴染みだ(です)』」
「そして、巻ちゃんと茉璃の関係は?」
『…部活の先輩と』
「…後輩ショ」

こんな偶然あるだろうか。
尽八の巻ちゃん発言や巻島さんにかかってきていた大量の電話。
確かに考えてみれば色々なところにヒントはあったのだろう。

なんだか不思議な三角関係に自然と3人笑みが溢れる。

そんなことをしていると、長瀞山の山頂、ゴールライン付近へ行くバスの最終便の時間が来てしまった。
私は2人に挨拶をし、そのバスへ乗り込む。

どちらが山頂を取るのだろう。
そんな期待と不安を胸に山頂に向かうのだった。
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