第69章 君と過ごす時間(巻島目線)
インターハイが終わって部活は5日間の休みに入ったけれど、休む時間など俺にはなかった。
9月からイギリスの大学に進む。
そのためには前倒しで単位を取らなきゃならねェ。
だから、インハイの翌日にはすぐに学校の図書館にこもることにした。
行く前に茉璃には一応伝えてあった。
”しばらく図書館につもりだ”と。
本当はその後に続けるつもりだった。
’’図書館でよければ、一緒に過ごしてほしい”って。
けど結局その言葉は喉で詰まったままだった。
言ってしまえば彼女の時間を縛ることになるような気がして。
だから初日、静まり返った図書館に一人座ってページをめくっていた。
ペンの音と外の蝉の声だけが響く時間。
その時、扉が開く音がして、顔を上げるとそこには茉璃がいた。
驚いて声をかけようとしたけれど言葉は出てこなかった。
茉璃は何も言わずに俺の向かいの席に座りノートを開く。
まるで最初から決まっていたのことのように。
言わなくても伝わってたんだと思った。
一緒にいたいという気持ちを俺なんかよりずっと静かにまっすぐ感じ取ってくれていたんだ。
ページをめくる音が重なって静かな時間が流れていく。
その穏やかさが、胸の奥を温かく満たしていった。