第66章 胸の奥の距離(巻島目線)
ステージの上。
視界いっぱいに歓声が広がる。
仲間たちの笑顔が弾ける中、心の奥にぽっかりと穴が空いたことに気づく。
視界の端にステージ脇からじっとこちらを見つめる茉璃。
笑顔は作っているけどどこか切なげな目をしている。
この仲間たちから離れ、ライバルとも離れ、何より茉璃と離れるということを実感する。
(俺、行くんだな…)
心の中でそっと呟く。
それでも今、この瞬間は祝福してほしい。
この景色を、喜びを一緒に味わってほしい。
彼女の目を見ればその瞳に言葉にならない想いが映っているのがわかる。
今すぐにでも茉璃を抱きしめに行きたい衝動に駆られながら、俺は軽く手を振った。
その小さな動作に全ての言葉を込めるように。
胸の奥で、別れの寂しさがじんわり染みて行く。
だけど今は、この誇らしい瞬間をたっぷりと味わい喜び合おう。
この頂から見た景色を、仲間達の笑顔を、ライバルとの高め合いを、そして茉璃との日々をーーーー
俺は忘れまいと胸に刻んだ。