第9章 複雑な気持ち(巻島目線)
富永がマネージャーになり1週間。
俺はなんとも形容し難い複雑な気持ちでいっぱいになっていた。
俺が富永に話しかけようとすると確実に手嶋がそばにいる。
(クハッ。こんなに近づくことが出来ただけでも奇跡だってのに、何を考えてるショ。俺。)
と、数メートル先で大量のボトルを運んでいる富永の姿が目に入る。
(しょうがねぇ。手伝ってやるショ)
そんなことを思い彼女のもとへ向かおうとすると、段差に気がついていなかったのか彼女は躓きそのまま前に倒れ込む。
(クソッ、間に合わねぇ!)
駆けつけたが少し離れていたため間に合わず彼女は地面へ倒れてしまった。
と思ったが、間一髪逆側にいた手嶋が間に合ったようだ。
富永が手嶋に抱きとめられている。
富永にケガがなくてよかったと思うと同時に、少し焦ったように手嶋の胸から顔を離し、顔を赤らめている彼女を見て、また俺の中は複雑な気持ちでいっぱいになった。
(あの反応。付き合ってねぇとしても確実にお互い好きあってるショ。)
そんなことを考えながらボーッとしているといつの間にか手嶋がそのまま練習に戻ったようで富永はボトルを洗い終わっていた。
(俺はグダグタ考えるのは苦手なんショ。今度、2人きりになる機会があれば聞いてみるか。)
そう決意をし、富永の置いて行った残り分のボトルを持ち部室へ向かう。