第7章 あの子が自転車競技部のマネージャー?(巻島目線)
今日のメニューは正門から出て市街地を通り、裏門坂を登って戻ってくるメニューだ。
このメニューの何がしんどいかって、毎回本気のレース形式で走ること。
金城がインターハイの怪我でまだ全開にして走ることができないため、田所が青八木と、俺が手嶋と、2人1組になってガチバトルをしなくてはいけない。
もう何本か走ったがクタクタだ。
休憩に入ろうと部室に近寄ると富永がドリンクとタオルを持って近づいてきた。
(自分で部室の中からボトルやパウダー見つけて用意したのか?それにタオルまで…どれだけいい子なんショ。クタクタで戻ってきたときに全部準備されてるってのは正直ありがてぇ。マネージャー…やってくれねぇかな…)
ドリンクとタオルを俺に渡し、他の部員の元へ向かう彼女に淡い期待を抱きながらしばらく目で追いかけていく。
すると、金城も俺と同じ気持ちだったようで、彼女にマネージャーの話を持ちかけた。そして彼女は即答で入部を決めた。
(ナイスッショ金城!)
今まで接点も何もなかった富永とこんな近くにいられる事になろうとは思ってもみなかった。
俺は誰にも見られないように小さくガッツポーズをした。
また彼女の方に目をやると、手嶋が会話に合流し肩を抱いているのが目につく。
先程までのテンションとは裏腹に、その姿に何故だか少し心が痛んだ。
そして一つの何かが俺の中に生まれた瞬間だった。